SANOらーめん

『佐野ラーメンのルーツ考』

 昭和30年代。駅前を西に向かい5分程、路地を入った角の孫太郎神社の斜向いに『北(ぺん)さんラーメン』という店があった(正式店名ではないかもしれぬ)。中国人の北さんが作る鶏ガラだし基本うっすら醤油で塩味のさっぱりと、しかもこくのあるスープの味が記憶にある。

 あれぞ佐野ラーメンのルーツと思っていたが、大正期に洋食店コックの中国人名前はやはり北さんによる青竹打ち麺作りが始まり、いいや台湾の人だ胡カヒンさんが麺を打って賄い料理に出したのがなどルーツに諸説あり。

 佐野でかつて隆盛を極めた織物産業の従業員が夜食にと屋台に並んだ、働き者の土地柄で主婦もパートで働き外食するのは当たり前だった、来客があると出前をととって持て成す習慣がある、などなどでラーメン需要が伸び一般食堂でもメニューに加えられるようになる。

 当時人口5万人の佐野に150軒ものラーメン店があり、平成の今では人口8万5千人だが200軒を越える店がラーメンを出す。

 

『佐野ラーメンの人気の秘密』

 まず、一帯は関東有数の小麦の産地で上質の小麦粉が入手容易なこと。そして、麺を打つときに粉に加える水はレシピ的平均35%だが佐野ラーメンは多加水麺とて約50%と多めだ。麺に加える水、ゆでる水、スープの水、多量の水を要するが当地には名水があるからこそである。

 さらに、数少なくなったが手打ち麺の店があること。佐野ラーメンの特徴のひとつ青竹打ちとは、長さ2m、直径20cm程の青竹にまたがり、竹を前後左右扇形などにリズミカルに移動させながら、練って寝かせた小麦粉をのばし打っていくことでコシがあり舌触りのよい麺になる。太めで平たく長めの麺にスープがしっかりとからむ。(製麺工場に特注する店も多い。麺は麺屋に、研究熱心なプロに任せるということ、なるほど)

 ところでラーメンはなぜこれほど佐野のみならず全国普及したのかについて「化学調味料説」がある。簡単に万人向けの味付けができ、ラーメンを安く提供できるので気軽に食べられるからだと。もちろん、鶏ガラや豚、野菜などでしっかりだしを取り一切不使用の店もある。あの調味料の後味が苦手な私はこういう店に出会うとうれしい。